【短】繰り返しの雨宿り


 胸に残る暗い感情が雲を作り出し、頭から流れ出るそれが、雨と勘違いしてしまうから。



 買ったばかりの新しい靴は、いつまでもそのまま。



 確か、気分を変えたくて買ったつもりだったけれど、意味がなかったんだな。



 いつも男性の前で身だしなみを気にするけれど、本当は意味がない。



 だって、彼には赤く染まった私が見えているのだから。



 自分の意思ではない何かが足を動かす。
 驚くほど簡単に白線を越える。



 迫り来る電車を見ながら、私はホームから落ちた。

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