【短】繰り返しの雨宿り
「いえ、構いません。少しだけ雨宿りさせていただいてよろしいですか?」
「それは構わないが――」
「マスター、ここ空いてるよ。お嬢さんが良ければ、だけど」
奥のテーブル席にいた男性が手を振る。
見たところ、四人掛けのテーブル席には彼一人しか座っていないようだ。
「常連客だ。見た目は泥棒みたいだけど、いい奴なのは保証するよ。相席になるけど、どうします?」
「マスター、一言多いよ」
私は相席経験がないため、正直なところ戸惑った。
しかし、男性は笑顔で手を振り続けていて断るのは悪い気がする。
「ありがとうございます。相席で構いません」
私はマスターである店主に一礼をして、空いている席に向かう。
だが途中、はたと思い出して男性に断りを入れてからお手洗いに駆け込んだ。