【短】繰り返しの雨宿り


 一人なら気にすることもない。
 異性を意識しているわけではないが、乱れた髪を直したいと思った。



 雨に濡れて酷いことになっているだろうと思って鏡を覗き込む。



 しかし、意外にも乱れた様子はない。スーツも平気だ。



 不思議に思いはしたが、すぐに店に入ったのが良かったのだろうと思うことにした。



 店内に戻ると、客は半分に減っている。いつの間にか帰ってしまったようだ。




「席、空いたけどどうする?」




 男性が話しかけてくる。私は少し悩んでから、首を横に振った。




「せっかくなんで、相席させてください」

「嬉しいこと言うね」




 こうして見知らぬ男性と相席することになる。



 私は初めての経験で緊張するが、それがまた程よい緊張で嬉しくなる。

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