【短】繰り返しの雨宿り


「はい、トマトジュースを――」




 私は慌てて返事をする。すると男性は少し目を見開いてから、平静を装うようにカウンターに目を向けた。




「マスター。トマトジュース一つね」




 私が言うより先に、男性が注文する。




「ありがとうございます」

「いいよ」




 BGMは店の雰囲気を壊さないように僅かに聴こえる程度。
 ジャズのような曲調ではあるけれど、私にはよくわからない。




「トマトジュース。お待たせ」




 その時、マスターがトマトジュースを目の前に置いた。レモンがトッピングされたトマトジュースだ。




「ありがとうございます」




 私は一口飲んでから、いつの間にか出た溜息に少し驚く。

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