【短】繰り返しの雨宿り
「大丈夫。心配症だな、マスターは」
「後先考えないから言ってやってるんだ」
「へいへい」
わかったのか、わかっていないのか、よくわからない返事をしてから私にもウィンクする。
どうやら常連客というのは本当らしい。お互いの言葉に遠慮が全くない。
「聞いてくれる?」
「はい、ぜひ!」
男性は何かを思い出すように窓の外を見る。
しかし、気温差のせいか曇った窓ガラスに景色はうつらない。それでも男性は、そこに何かを見ているようだ。
あと二、三日もすれば七月。
暑い日も少しずつ増えてきた。
この間まで咲いていた紫陽花も気がつけば姿を消していて、代わりに夏らしい生き生きとした草木が顔を出し始めている頃。