星空シンデレラ
「そういえば沙良、外に散歩に行ってみない?ちょっと桜が咲き始めたんだ。風も暖かくなってきたし、気持ちいいよ」

「…」

正直、気乗りしない。
立花家に来てから、億劫で憂鬱で、外出したことはなかった。
人と会うのが嫌だし、外の世界の何もかもがもう面倒で、少し…怖いし。

「…嫌だ?まだ怖い?」

「いや、そんなことは…」

「はい!俺にはわかりまーす!沙良いま嘘つきました!大丈夫じゃないのに大丈夫と言いました!そういうの良くないと思いまーす!」

誰も大丈夫とは言ってない。最後まで聞く前に遮ったのはどこの誰だ。

「母さんがいっぱいいろんなお菓子作ってくれたんだ。河原でバトミントンしてさ、お菓子食べてお花見しない?」

…それはちょっと、楽しそうだけど。

「あっ、楽しそうって思っただろ?ちょっと表情が柔らかくなったぞー。沙良はそうしてる方がいいよ。無理に行こうとは言わないけど、少し体を動かした方が、気持ちも柔らかくなりやすいよ。な?」

…今日の遼夏は、ちょっと強引だ。
いつもなら私が少し渋ると、絶対にそれ以上誘おうとはしないのに。

これは私の健康を気遣っているのか、それとも…

「近所にある河原大きくてさ、ほんとに風が気持ちいいんだよ!絶対最高のピクニック日和になるから!そこでバドミントンとか、もう絶対すんばらしいよ!俺が保証する!」

…単に自分がバドミントンしたいだけなのか。

圧倒的に後者のような気がするが、私を連れ出すのが目的ではなく、『遼夏がやりたがっている』のなら、私が無視できるわけがなかった。
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