星空シンデレラ
ここにいる部員は5人だから、私がまだ紹介されていない人はあと一人ということになるけど…どうやらあと一人と対話するのは無理そうだった。

その人は教室の前半分にまとめられた机の上にブランケットを敷いて、簡易ベッドを作って寝っ転がっているのだ。顔にはハンカチをかけている。

あんなの、谷地さんが放って置くのかな…と思った瞬間、期待を裏切らず谷地さんが机の上に立ち、その人の横に行くと…

「…えっ?」

「あちゃー、やっちゃんスイッチ入ったちゃったよ」

まるでその人(おそらく長身の男性)をおもちゃのように軽々と両手で抱えあげると、自分の右肩にその人の頭側を、左肩に足側を乗せる形で、その人の体を折るように両腕で押さえつけた。

「いだだだだだだだだだだだ!!!」

「やる気ねぇなら帰れ!てか辞めろ!」

「ふざけんな!降ろせゴリラ!」

「オラッ」

ごき。

「ぎゃあああああああああ」

「…じ、人体ってあんな方向に曲がるんですね」

「いや、普通に行きてりゃまず曲がらないよ。あれは異例」

「新入りィ!」

「は、はいっ」

男の人の関節をキメたまま私を勢いよく振り返った谷地さん。条件反射で返事をしていた。…するほかなかった。

「いい!?演劇を本気でやるってのは、こういうことよ!」

どういうことだ。

「本気でやる奴以外、アタシはいらない!それは裏方だろうが役者だろうが一緒よ!それでもアンタがやりたいっていうのなら、このアタシが納得するような決意の表明を見せなさいよね!本来ならあと1年もすれば引退する同級生の世話なんて、即戦力でもない限り手間なんだから!」

「…は、はい」

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