星空シンデレラ

無意識のうちに亀のように首を引っ込めていた私の肩に、天海先輩がポンと優しく手を置いた。

「…やっちゃんはああ言ってるし、俺もそれは正しいと思うけどね。でも、まず楽しそうだな、とかやってみたいな、って思うなら考えてくれればいいよ。そんなに重く考えないで。演劇って本来は、果てなしに楽しいものだから」

先輩は、優しく微笑む。

「…楽しい…ですか。なんとなく、伝わってきます。遼夏や、谷地さんや、天海先輩達をみていると」

「それは嬉しいな。…公演なんかすると、結構入部希望が来てくれるんだけどね。やっちゃんの鬼面接のおかげで、99%逃げてくよ」

…苦笑するしかなかった。

「ただ、おかげで本当にやりたいって人が集まって来ているのも事実だ。…あそこで振り回されている彼はまぁ、ちょっと例外なんだけど」

「…あの人も裏方なんですか?」

「…うん。やっちゃんの昔馴染みで、昔は…もうちょっと、頑張ってくれてたんだけどね」

…何かあったのかな。天海先輩の、少し困ったような笑顔からそう感じ取れたけど、体験入部に来ただけの私がそれを聞くことは躊躇われた。
先輩はすぐに優しい笑顔を作り直して、窓の外を指差す。

「せっかく来てくれたんだから、簡単な短編でもやろうか。筋トレじゃ味気ないもんな」
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