星空シンデレラ
シンデレラの第一歩
先輩は自分で書いたこともあって台本は暗記しているらしく、鼻歌を歌いながら軽く内容を確認している。
一方私はといえば…実はこう言った台本を覚えるのは得意な方だ。
もともと読書はする方だし、物語というものが好きだった。
先輩から「セリフは好きに変えていいし、アドリブを入れても全然OK。むしろどんどん来い」と言われていたのもあって、物語さえ頭に入って入ればセリフを覚えることにあまり不安はなかった。暗記するわけじゃなく、私なりの言葉で、その物語の続きを演じればいいわけだから。
「おや、もうできたの?」
「大丈夫だと思います」
「へえ、すごいな。さすが遼夏の妹だね」
「えっ…知っているんですか?」
先輩は微笑んだ。
「遼夏が言ってたんだよ。『妹なんていたっけ?』って皆が訊いたら、『最近家族になったんだ』って言ってたから、色々事情はありそうだけど。
…キミのことをとても心配していたよ。元気がないんだって。昔は明るい子だったのに、最近は自分にすらあまり笑顔を見せてくれないって。…まぁ、これを聞いたのは部長である僕だけだけどね。遼夏はあまり他人にベラベラ話したくないみたいだったけど、自分だけじゃどうすればいいか、わからないって。僕に相談してきたんだ。…遼夏を責めないであげてね」
「…当たり前ですよ。わかってます。…ありがとうございます」
思わず言葉に詰まる。
私が心配をかけてしまっていることはわかっていたけど、申し訳なく思っていたけど…それでも、どうしようもなく胸が暖かくなった。
「遼夏も僕も、同意見になったんだ。演劇を始めてみたらどうかって。僕たちは演劇が大好きだから言えることだけど…。
演劇は、見ているだけで楽しい。幸せなストーリーを見れば幸せになるし、悲しいストーリーだって思い切り涙を流せばスッキリする。どちらも感動するってことには変わらないからね。
そうしていけばキミの心の柔軟になるんじゃないかと思ったし…なにより、始めは作りものの笑顔だったとしても…続けていれば、それは自然と本物になる。ちょっと口角を上げるだけで、いい気分になれるみたいにね。
だから、遼夏は…演劇部のくせに嘘は下手でさ。きっと、強引に『部活見学だー』とかいって演劇部に連れて来たんだろう?君に演劇を始めてもらうために。他のところは周る気なかったんだろうにさ」
「あはは。当たりです」
…でも、私は今までずっとその強引さに救われてきた。守られていた。何も力を持たない、生まれたての子どもみたいに。
「…遼夏が、私をこんなところまで連れてきてくれたから。だから、私ももう一度、頑張ってみます。遼夏が感動して泣いちゃうような、何かができれば嬉しいから」
「うん!それが演劇になるかはわからないけど…キミの可能性は無限大だからね。でもせめて、僕がそのはじめの一歩のお手伝いでもできれば嬉しいな」
…先輩、優しいな。どこか、遼夏みたいだ。
私はぺこりと頭を下げた。先輩はそれを私の合図だと思ったみたいで、笑顔でそっと台本を閉じた。
「じゃあ、始めようか。澪田沙良ちゃん。キミの新しい物語の、はじめの一歩」
一方私はといえば…実はこう言った台本を覚えるのは得意な方だ。
もともと読書はする方だし、物語というものが好きだった。
先輩から「セリフは好きに変えていいし、アドリブを入れても全然OK。むしろどんどん来い」と言われていたのもあって、物語さえ頭に入って入ればセリフを覚えることにあまり不安はなかった。暗記するわけじゃなく、私なりの言葉で、その物語の続きを演じればいいわけだから。
「おや、もうできたの?」
「大丈夫だと思います」
「へえ、すごいな。さすが遼夏の妹だね」
「えっ…知っているんですか?」
先輩は微笑んだ。
「遼夏が言ってたんだよ。『妹なんていたっけ?』って皆が訊いたら、『最近家族になったんだ』って言ってたから、色々事情はありそうだけど。
…キミのことをとても心配していたよ。元気がないんだって。昔は明るい子だったのに、最近は自分にすらあまり笑顔を見せてくれないって。…まぁ、これを聞いたのは部長である僕だけだけどね。遼夏はあまり他人にベラベラ話したくないみたいだったけど、自分だけじゃどうすればいいか、わからないって。僕に相談してきたんだ。…遼夏を責めないであげてね」
「…当たり前ですよ。わかってます。…ありがとうございます」
思わず言葉に詰まる。
私が心配をかけてしまっていることはわかっていたけど、申し訳なく思っていたけど…それでも、どうしようもなく胸が暖かくなった。
「遼夏も僕も、同意見になったんだ。演劇を始めてみたらどうかって。僕たちは演劇が大好きだから言えることだけど…。
演劇は、見ているだけで楽しい。幸せなストーリーを見れば幸せになるし、悲しいストーリーだって思い切り涙を流せばスッキリする。どちらも感動するってことには変わらないからね。
そうしていけばキミの心の柔軟になるんじゃないかと思ったし…なにより、始めは作りものの笑顔だったとしても…続けていれば、それは自然と本物になる。ちょっと口角を上げるだけで、いい気分になれるみたいにね。
だから、遼夏は…演劇部のくせに嘘は下手でさ。きっと、強引に『部活見学だー』とかいって演劇部に連れて来たんだろう?君に演劇を始めてもらうために。他のところは周る気なかったんだろうにさ」
「あはは。当たりです」
…でも、私は今までずっとその強引さに救われてきた。守られていた。何も力を持たない、生まれたての子どもみたいに。
「…遼夏が、私をこんなところまで連れてきてくれたから。だから、私ももう一度、頑張ってみます。遼夏が感動して泣いちゃうような、何かができれば嬉しいから」
「うん!それが演劇になるかはわからないけど…キミの可能性は無限大だからね。でもせめて、僕がそのはじめの一歩のお手伝いでもできれば嬉しいな」
…先輩、優しいな。どこか、遼夏みたいだ。
私はぺこりと頭を下げた。先輩はそれを私の合図だと思ったみたいで、笑顔でそっと台本を閉じた。
「じゃあ、始めようか。澪田沙良ちゃん。キミの新しい物語の、はじめの一歩」