秘密の恋 〜社長に恋して〜
「ちょっと。」
それだけを何と答えた。

「ふーん。」
いつも通りの何を考えているのか分からない返事が返ってきた。
何もいう事が出来ない瑞穂に、

「初めて見る顔だよね?よく来るの?」

(- 気づいてない!?薄暗いし、こんな格好だしコンタクトだし…。)

気づかれてしまえば、ただの告白のようになってしまう。

(- そうしたら、ずっと机の引き出しにある退職願の出番だ。でも気づいていない。)

「ここは初めて。」

「マスター彼女に何か作って上げて?」

マスターは注文しなくても、飲むものが解っているのだろう、由幸の前にグラスを置いた。

「了解。」

それだけ言うと、マスターは慣れた手つきでシェイカーを振ると、瑞穂の前にグラスを置き、綺麗なピンク色の液体を注いだ。

「キレイ…。」
つい零れた瑞穂の声に、由幸は微笑んだ。

「なんてカクテル?」
由幸はマスターに聞いた。

「名前は無いよ。桃をベースに作った。彼女のイメージで。」
そういうと、マスターも笑顔を見せた。

50代ぐらいであろう、落ち着いた雰囲気のマスターに瑞穂も微笑んだ。

「じゃあ、乾杯。」
「乾杯。」

気づかれていない事、更にはお酒の力で瑞穂は今までになく、饒舌に、そして大胆になっていた。
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