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私だって何も知らないわけじゃない。
もうこの人達がどうしてここにいるのかくらい、予想はついている。
この人達は債権回収に来たんだ。
母は沢山の会社からお金を借りていた。
その中にはきっと悪徳な物も含まれていただろう。

このままでは不味い。
逃げなければ、と体が勝手に動いた。
誰も私の動きを予想することなどできなかっただろう。
調子の悪い体でどこまで動けるかはわからないが、何もしないよりは遥かにマシだと思えた。
3人の横を擦り抜けて外へ逃げる。


「ちょ、待て!」


そう後ろから怒鳴る声が聞こえた。
その指示にはいはいと頷くほど馬鹿ではない。
3人は勿論追いかけてくる。
大人の足の速さに私が勝てる筈がない。
ならば知恵を使おうと私は細道に入り込んだ。
男達は体格が良いため、細道で素早く行動することは不可能。
幸いなことに私は小柄なため、細道をうまく利用し、男達の目をくらまして結果逃げ切ることができた。
普段あまり走ることがないため、呼吸が大きく乱れる。
それでも足を止めず、人通りの多い場所へと移動する。
人通りの多い場所の方が、見つかりにくいと思ったからだ。
もし見つかってしまったとしても、人通りの多い場所で1人の少女を追いかけようとは思わないだろう。

ここまで来れば大丈夫だろう、と思いすぐそこにあったベンチに腰掛ける。
一度呼吸を整えて、空を見上げる。
暗くなりかけた空。
風は冷たく、私の体温を奪っていく。
再び眩暈が襲い、頭をかかえて蹲る。


「ママ、何処にいるの……?」


その声は誰にも届かない。
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