ColorLess
取引は成立。
2人で微妙に距離を取りながら男に着いて行く。
この男、やはり金銭的に余裕があるのか、昨夜連れて行かれたホテルとは比べものにならないくらい綺麗なホテル。
キングサイズのピンク色のベッド、豪華なジャグジー・ジェットバス、綺麗な柄の天井、壁、絨毯、広い部屋、全てにおいて高級を思わせる。
しかもか、夜食サービス付きだ。


「何か注文して良い?」
「良いよ、好きなだけ注文して」
「ありがと」


そう一言、メニュー表を開く。
空腹が満たされるならなんでも良いと、適当にピザを頼んだ。
注文してすぐに部屋にピザが届く。
メニューに載っているピザの写真と実物を比べると、随分と差があるように感じた。
所詮こんな物か、と気にせずにピザに口をつける。


「美味しい?」
「レンジでチンの味」


率直な感想。
この味には慣れていた。
母から出される料理はいつもこの味だ。
美味しいとはお世辞にも言えないが、空腹を満たすことができれば何でも良かった。

私がピザを食べている間、男は部屋に設置してある自動販売機で何か飲み物を買おうとしていた。
少し悩んで、ビールを買ったよう。
男が缶のフタを開けると、プシッという音が部屋に響いた。
母を思い出して、少し悲しくなる。

ピザを食べ終えると同時に、男は飲みかけのビールを机に置いた。
それが合図とでも言うように、男は強く私をベッドに押し倒した。
男の激しい愛撫を他所に、高級ベッドはこんなにもフカフカなんだ、とそんなことを考えていた。
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