ColorLess
行為の後は、全てがどうでも良くなる感覚に陥る。
不調のためか、行為が終わると私はすぐに眠りについた。
暖かい部屋、フカフカのベッド。
こんなに心地の良い眠りは初めてだった。

朝、目を覚ますとそこに男性の姿はなかった。
逃げられてしまったかと一瞬焦るも、すぐにその不安は拭われる。
部屋のテーブルの上に諭吉が5枚。
ご丁寧に置き手紙まで添えられている。


「かえります。今日はありがとう」


声に出して手紙を読んでみる。
律儀な人だと思った。
お腹いっぱい食べて一晩ぐっすり寝て、すっかり快調だ。
あの男性に感謝しなくては。

ホテルを出ると雨が降っていた。
気温は低い。
今が何月なのか、明確にはわからないが、きっと冬が近付いているのだろう。
取り敢えず、今手元にあるお金で傘と上着を買おう。
この寒さにはとても耐えられたものではない。

近くにあった店に入り、服を探す。
お洒落よりも機能性重視だ。
黒色のパーカーを手に取る。
地味ではあるが、フードもついているし、これなら顔を隠せるだろう。
生地もしっかりしていて、風を通さなさそうだ。
これにしよう、とレジに持って行こうとしたその時、ある2人の少女が目に映る。


「これ、この服!可愛くない?」
「可愛い!ねぇねぇ、お揃いで買おうよ!」


丁度、私と同じくらいの年齢だろうか。
2人とも同じ制服に身を包んでいる。
きっと学校帰りだろう。
楽しそうな笑顔から目を逸らした。
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