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「なぁ……。こいつ、本当にお前の子供じゃねえよな？」


今まで私と母のやり取りを黙って見ていた男が徐に口を開く。
するとここで初めて母が狼狽えた。
私があまりに必死に母を呼ぶものだから、男は母を疑わざるを得ない。


「そんなわけないでしょ！あり得ないから！」


思い切り母は否定して見せた。
母を困らせたかったわけではない。
私を捨てないで欲しかった。
ただそれだけなのに。
母は私といることで不幸になる？
なら私がいなくなれば、母は笑ってくれるのか。
そんな、ネガティヴな思考が止まらない。
考えることをやめてしまいたい。
もうどうすれば良いのかわからず、私はその場に尻餅をついたまま動けなくなる。
その間に母と男は私の前から姿を消した。
とても、とても呆気なく、私と母の関係は終わった。

雨は私の体の体温を奪っていく。
もう感覚も鈍い。
このまま眠ってしまいたい。


「寒いなぁ……っ」


声が震えたのは寒さのせいか。
やけに潤いを含んだ声だなぁと思ったら、いつの間にか涙が頬を伝っていた。
涙は雨と混じって地面に落ちた。

元々体は強い方ではなく、その体が長時間の寒さに耐えられるわけがない。
視界がぐらりと揺れたかと思えば、次の瞬間、視界が真っ暗になる。
何も見えなくて怖い。
そう思ったと同時に、私は意識を手放した。