大学生になりたい




「え、チナミまだ志望大学決めてなかったの」



志望大学が決まらないことを相談すると


アヤノは開口一番そう溢した



「目標も決まってないのに毎日ひたすらガリガリ勉強してたわけ?


チナミやっばい」


ゲラゲラ笑うアヤノ



しょうがないじゃん




「決められた勉強をやるのは全然苦にならないし


むしろそれをずっと当たり前にして生きてきたのに



今更自分で勉強したい分野を絞れだなんて無茶だよ…」




今まで


学校で決められた勉強だけして


両親や先生を満足できる方向に進んできた



「アヤノはどこ志望なの?」




「わたしはO大医学部一本の予定」



即答するアヤノ



O大医学部

日本でいちばんの医学を勉強できることで有名



O大卒の医師は優秀な医者ばかりと聞く



「どうして医学部志望なの?」



アヤノはためらうことなく話す



「わたしの弟が結構珍しい心臓病らしくて


姉としてだけじゃなくて医者として何かしてあげたいの」




「弟を助けたいってこと?」



「それもあるけど

病気を治す以外にも医者ができることってたくさんあると思うの


診察が丁寧な医者も雑な医者もいるでしょう?


弟が安心して治療受けれるようにしてあげたい



だから何としてでも現役で合格して医者になりたい」





語りすぎちゃった、とアヤノが笑う




両親や先生の期待に応えるためじゃない


誰かのために


わたしはこれまで頑張ったことはあるだろうか
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