階段落ちたら異世界に落ちてました!

族長会議のその後Sideマール

久しぶりの族長会議で王宮に行くと元気なまどかに出会えた。


やはり当代サールーン国王のエドアルド陛下の番だったまどかは陛下の腕に抱っこされて出迎えてくれた。



さすが竜人族。
番命の彼らは得た番を生涯慈しみ愛おしみ守る。


陛下の目にはまどかへの愛情がたっぷりと見て取れる。


甘い、甘いわ。

砂吐きそうなレベルの甘さダダ漏れよ。

竜人族の番はみんな大変ね・・・


他の獣人族はここまでではないのだ。
番は確かに唯一無二。
しかしほかの種族は意外と自由に恋愛するし、番以外とも子を残すことはある。
特に唯一無二の番と出会う前ならという前提でだが。
だからここまでの溺愛はなかなか無いのだ。


でも、竜人族のこの溺愛っぷりを見ると私も番に出会いたいものだと思う。


私はまだ唯一無二の番を得ていない。

まだ産まれていないのか、それとも先に亡くなってしまったか。
今居る羊人族の中には私の番は居なかった。
大体同じ種族の中に番が居るものなのに。


ウィルとショーンともここに来るまでに話したが、2人は意味深にこう言った。


「そろそろマールも出会えるさ。」
「案外すぐ近くにいるぞ。種族の違いを無視して感じてみろ?」

そう2人は言ったので、私も今回の族長会議に参加する別の族長が私の番の可能性があると何となく察して気にしてみることにした。

ちなみにウィルとショーンには同じ種族の番が居るし、可愛い子どもたちもいる。



しかし、気にしてみたもののサッパリと分からず。
更には久しぶりのまどかとの会話を楽しんでいて番探しはすっかり頭の外に飛んでいた。


食べ物をつまみながらお酒を楽しんでいた所に


「マール、ちょっといいか?」


そう声をかけてきたのは鳥人族長のハーバイト。


「あら?ハーバイトなぁに?」



この時いつになく幸せそうな陛下とまどかを見て安心からかお酒が進み珍しく酔っていた私。


トローンとしつつニコッと微笑めば


「クッ、これはヤバイだろ・・・。マールちょっとこっち来い!」

グイッと引かれて連れて行かれたのはバルコニー。

私達の後ろ姿は族長達と王宮の竜人族とまどかにバッチリと、かつニヤニヤと見守られていた。



「なぁ、マール。今俺といて何か感じないか?」


そうおもむろに聞いてくるハーバイト。
ハーバイトと出会ったのは私が族長に就任してからなのでホントにごく最近。


羊人族は世代交代したばかりで私はまだまだ新米族長だ。


それに比べハーバイトはもう長い事族長をしているベテランである。


しかし、何かを感じないかとは何だ?
かなり漠然と聞かれて小首を傾げてしまう。


「あー、もう!!この鈍感娘!」


ハーバイトは髪をかきあげて、くしゃくしゃとした。
そして唐突に抱きしめられた。


抱きしめられてフワッと香るのは夏の風の空気。


そして抱きしめられた瞬間ストンと落ちてきたこの嵌る感じは。


「あぁ、やっと見つけた俺の番。」


そう言ってハーバイトは頬を私の頭にすり寄せている。


この無かったところに嵌った感覚。
これが番なのか。

今までこれ無しで居られたなんてすごい・・・


嵌った途端それは無くてはならない唯一無二の者だと分かる。

番を得るとはこうなのか。


「ハーバイト、待たせてゴメンね。」

そう言うとぎゅーっと抱きしめ返す。


ハーバイトは450歳。
私は150歳。

大体みんな100歳超える頃に番を探し始める。
寿命が長い程探す相手が見つからない時間が長いのは拷問であろう。


「あぁ、確かに長かったな。だが出会えた。それで充分さ。これからはいつでも会えるしな。」

そう言って私の髪を撫でるハーバイトの表情は甘い。


「会いに来てくれるの?」

私は地上の領土の族長。そこをなかなか離れられない。


「俺は鳥人族だ。空を統べるが、割と自由が効く種族だ。心配するな、しばらく羊人族の領土で過ごす。それにそろそろ世代交代して良い時期だからな。交代すればずっと一緒に居られるさ。」


そう微笑んで言うハーバイトに急にドキドキとしてきた。


照れから顔が赤くなってきてるのが恥ずかしくてハーバイトの胸に顔を押し付けて止まる。


「マール、共に過ごしてくれるか?」
髪を撫でながら言うハーバイトに

慌ててて顔を上げて
「もちろんよ!」

そう答えた。



そうして微笑みあってキスを交わす。


私の番は鳥人族だったんだ。
どおりで領土で見つからなかったわけだ。


しかしウィルとショーンは何か知っているようだった。


「ねぇ、ウィルとショーンは何か知ってる風だったんだけど。」

そう聞くと


「あぁ、ウィルとショーンには相談していた。マールにもう相手がいるのか?とか何が好きそうだとかな。」

そう照れくさそうに話すハーバイトは私よりずっと大人なのに可愛い。


「マール、これを。」


そう言って差し出された箱の中には


「可愛い・・・」


四つ葉のクローバーと鳥の羽根を模したリングとネックレスのセット。

「ありがとう!」

嬉しくて見上げたその先は愛しさを隠さない番の瞳。


「マール、一緒に幸せになろう。」


「えぇ、一緒に」


再びキスを交わして微笑みあって。


番を得て私はその幸運をかみしめた。
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