【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
◼水樹side◻




「あー、戻るか」


あの日から、ずっと、こうだ。


あの日、兄さんが一心に向けていた愛をあの人が裏切った日から、兄さんは変わった。


純粋な愛は、憎しみとなり、人間の優しさは、兄さんにとって傷つけるものにしかならなくなった。


『信じたけど……ダメなんだな……』


泣きながら、そう言った兄貴を俺は、忘れていない。


まだ、6歳だったけど、兄貴が泣いたのはそれが最初で最後だったから―…


あの人に愛されようと必死で頑張って、涙をこぼさなかった兄貴。


愛を裏切られ、憎しみとなってからは、泣くことを忘れた兄貴。


『愛されなくても…嫌われていてもっ!俺は、好きだった。愛してほしかった』


総一郎兄さん、京子姉さん、そして、俺たち双子に与えられたあの人からの愛。


唯一、相馬兄さんにだけ、与えられなかった愛。

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