【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「あー、それね、転入生が来るからさ、その準備」
「いつ?」
「今日かな…なんせ、十人くらいだし」
「はぁ!?」
思わず、大声を出すと。
「…」
周囲にいた生徒達が沙耶を見ながら、ヒソヒソと話し出す。
本当、あの噂ごときで失礼な。
毎回のことだが、いい加減、イライラしてくる。
「…チッ」
荷物を抱え直して、舌打ちする。
「ふふ、相変わらずねぇ…馬鹿みたいに、噂ばかり。脳みそが残念といっているよう…」
すると、隣から禍々しい雰囲気。
「柚香、面倒くさいからいいよ」
「…そう?」
「ん。で、転入生がなんだって?」
放っておけば、取り返しのつかないことになりそうなので、とりあえず宥めると、気を取り直した柚香が説明してくれた。
「その転入生たちに学校案内とかが必要でさ、今日、沙耶のクラスにも一人、女の子が転入して生きてるよ」
「へー」
正直言って、興味ない。
「過去にいろいろあったらしくてー、耳に障害持ち」
「…」
「んで、おとなしめの良い子ちゃん。どっかのクソビッチたちとは、違うから。沙耶、よろしくね?」
沙耶が気の抜けた返事をすることを、初めから分かっていたと言うように、柚香は笑顔で毒を吐いた。
「…私といて、巻き込まれないと良いけど」
沙耶は虐めの対象だ。
大人しく殺られる質ではないが、そんなおとなしい子が沙耶のそばにいて、被害は及ばないだろうか。
「沙耶がそう言うのは、分かってた。でもね?仕事を面倒くさいからやだって断るのはあっちなんだよ?そんな中でも、私を見捨てずに生徒会メンバーでもないのに、手伝ってくれる沙耶にご褒美あげてもよくない?」
柚香の言葉の言い回し。
「そりゃ、幼なじみだし、色々お世話に―…ん?」
なんか、違和感…いや、嫌な感じがする。
「ま、まさか―…」
「ん、そのまさか。…学校案内、手伝って?」
「はぁ…」
大抵外れない、柚香の言動。
本当、ドンピシャで泣きそう…