【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
沙耶は、誰よりも強い。
強くあろうとして、実際に身を守る方法を身に付けた人間だ。
あの日、覚えた胸の痛みを忘れないように生きるその姿。
『……泣いてるの?』
私に差し伸べられた、希望の手。
『私は、沙耶。黒橋沙耶。貴女は?』
あの8歳の冬を、私は忘れない。
行き場のない私にくれた、希望。
『私ね、独りぼっちなの。だから、側にいて?』
家族がいるのに。
私とは違って、愛してくれる両親がいるのに。
彼女は、そう言う。
なんで、って、苛立ったこともあった。
恵まれている生活に。
けど……
『これは、私のお金じゃない。私のこの服も、家も、明日の食事も、激しく脈を打つこの心臓だって、取り上げようと思ったら、取り上げられる人がいる。それが、私の父親。与えた人だからこそ、取り上げることもできる人。恐らく、私にとって、この世界で一番、怖い相手……』
明らかに、12歳の台詞ではなかった。
彼女の闇は重くて、でも、見とれるほどに綺麗で。
『はぁ……っ』
発作を起こしたときだって、彼女は強くて。
『誰も、呼ばないで……っ、すぐ、良くなるから…っ!』
苦しそうなのに、耐えて。
どうして、彼女は自ら一人になるのだろう。
不思議に思ってばっかりだった。
そんなある日。
『そうか、沙耶が……』
沙耶の両親に、今まで自分が見たことを打ち明けた。
すると、沙耶の唯一の恐怖の相手である健斗さんは、笑って。
沙耶の過去の話をしてくれた。
『忘れないでくれ。あの子は、一人なんかじゃない。いや、独りにしちゃいけないんだ。独りにすれば、完全に壊れる。全てを忘れて、壊し始める。最後には、恐らく、自分でさえも――……』
『嫌ですっ!沙耶がいなくなるなんて……あの子は、私を救ってくれた!私も救いたい!どうすればっ、良いですか……っ!?』
重いって訳じゃない。
これほどまでにないと言うほどに辛いことでもない。
何より、沙耶のせいではないのだ。
あの二人が消えたことは。
なのに、彼女が自分を責め続けるのは……