【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1



そっと、服から手を離させ、代わりに沙耶の手に自分の指を絡めた。


「ん……そ、し……あさ、ひ……」


“草志”と“朝陽”



涙する彼女の夢には、誰が現れているのだろう。


助けを求める、その手を引いて、苦しみなんかない世界へと連れ去ってしまえたのなら。



何度も、何度も思いながら、前世で消し去った考えが再び、蘇る。


「お前は……幸せにならなくちゃ、ならないんだよ……」


誰よりも、誰よりも。


この世界で、誰よりも、幸せになってほしい。


裏切りだと言われても良い、“姫”よりも、幸せになってほしい。


彼女が笑える世界がほしい。


彼女を傷つけない世界がほしい。


彼女を傷つける、運命。


それをすべて、書き換えられるなら。


彼女は、俺に出逢わなかった。



前世でも、幸せになれたかもしれない。



< 332 / 425 >

この作品をシェア

pagetop