【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
そっと、服から手を離させ、代わりに沙耶の手に自分の指を絡めた。
「ん……そ、し……あさ、ひ……」
“草志”と“朝陽”
涙する彼女の夢には、誰が現れているのだろう。
助けを求める、その手を引いて、苦しみなんかない世界へと連れ去ってしまえたのなら。
何度も、何度も思いながら、前世で消し去った考えが再び、蘇る。
「お前は……幸せにならなくちゃ、ならないんだよ……」
誰よりも、誰よりも。
この世界で、誰よりも、幸せになってほしい。
裏切りだと言われても良い、“姫”よりも、幸せになってほしい。
彼女が笑える世界がほしい。
彼女を傷つけない世界がほしい。
彼女を傷つける、運命。
それをすべて、書き換えられるなら。
彼女は、俺に出逢わなかった。
前世でも、幸せになれたかもしれない。