【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「氷月、要点をまとめて話せ」
「わかった」
「ちょっと、氷月!俺がっ…」
「五月蝿い」
騒ぐ水樹を無視しながら、氷月は言い放った。
「俺と水樹が見つけた、唯一無二」
それは、女を指す。
生涯、愛し抜くことになる女だ。
「千尋は、ついてくると言った。夕梨は、わからないけど」
千尋が氷月で、夕梨が水樹の唯一無二。
それぞれ、かつての恋人。
かつて…そう、もう、遠い、遠い、過去の。
「どこの学校だ?」
「華西高校。夏翠たちが行った高校だよ。そこで、薫たちが見つけものをしたらしくてね」
夏翠たちが行った学校…。
ああ、あの雪さんが仕込んだ学校か。
『学校サボるなんて、学生の本分を忘れているだろ?だから、思い出させるんだ。ちょっとは、お灸を据えないとな』
雪さんのことだから、なんだかんだ言って、無駄なことではないはずと思っていたが…やっぱりか。
「見つけもの?」
薫には、既に唯一無二がいる。
眠ったままであるが。
関東一に立つ家、焔棠家の若頭。
「うん、その確認を、俺らはしてくるよ。姉さんには、話してあるから。手続き、お願い」
焔棠薫は、相馬たちの幼なじみで、遠い、過去に関係のある人物である。
夏翠というのは、姫宮夏翠。
彼女もまた、相馬たちの幼なじみである。
この二人が中心となって、行った学校。
そこで何を見つけたのだろうか。
「…分かった」
姉さんに頼んでいるならば、ひとまず安心である。
相馬は五人兄弟の真ん中だ。
上に兄と姉が一人ずついて、両親がいない俺らにとって、姉さんがこの御園を仕切っているような感じ。
この弟たちにも、手伝ってほしいのだが…。
学生の本分は勉強なので、致し方ない。
「気を付けろ」
命を狙われることが多い、俺達。
それは、この家に生まれたがゆえの宿命だ。
水樹ははにかんで、氷月はそっぽ向いて。
「兄さんにも、早く見つかるといいね」
「唯一無二」
双子ゆえか、考えていることも同じらしく。
「ばーか。女なんて、ごめんだよ」
双子が出ていった静かな部屋で、相馬は一人呟く。
少しずつ、過去の傷が、疼き出す。