【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「端から見れば、そつのない大人。けど、やっぱり、高校生だ。……沙耶を助けてくれたことに関して、父親として、沙耶のただの同級生の君に礼を言う」
(……やっぱりな)
勘違いではなかった。
嫌な予感は的中した。
大体、”黒橋”って名字の時点で気がつかなかった俺は、相当にボケているらしい。
「沙耶のお父さん、ですか……」
意外と言うか、この人が父親と言われたら、沙耶の変な性格も納得してしまうから、恐ろしい。
「そうだよ。気がつかなかっただろう?俺達は、ほとんど家にいないからな」
「そう言われてみれば……いないことの方が多いですが、仕事ですか?」
結果、ご飯を食べることを面倒くさがって、沙耶は空腹でぶっ倒れる。
……今回も、それが一原因であった。
「ああ。……まぁ、家を空けてるのは、別の大きな理由があるんだがな……」
「はい?」
「いや、何でもない。……ところで、沙耶と一緒になんかいて、苦労はしないかい?」
最近も、こんなことがあった。
沙耶に関係することで、誤魔化されることが。
一体、沙耶はどんな女なのか。
「……鈍い、とだけ、言っておきます」
今の相馬に言えることはなかった。
沙耶の事はなにも知らない俺には。