【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「本当、忙しい夫婦だわ」
ぶちギレたら、怖いランキング一位のお母さん。
敵に回したら、面倒臭いランキング一位のお父さん。
「フフ、沙耶の家は面白いね」
両親を送っていくと、共に出ていった相馬の背中を見送った後、夏翠が笑いながら言った。
「えぇ?夏翠、そう見えるなんて、視力やばくない?」
「全然、良いわよ?」
他愛もない話をして、過ごす。
三週間目を突入した、入院生活の過ごし方。
「……それよりさ、夏翠、時間は大丈夫なの?」
「今夜、接待があるけど……大丈夫」
「いやいや!準備とかは?」
時刻は、午後四時。
「平気、平気」
適当に言う、夏翠。
私もこういうところがあるが、この子も相当である。
「行きなよ!大丈夫だから!」
「えー、面倒」
「いいから!また、来てくれると嬉しいし……すぐに退院するから!」
しぶしぶって感じで、夏翠は立ち上がる。
そして、むくれ顔で呟いた。
「……沙耶もわかると思うけど、今回の接待、お見合いみたいなものなのよ。私には、飛鷹がいるのに……」
「うっ……あの、面倒なやつね」
お嬢様というと、なにかと厄介だ。
家のために、見合いをさせられるから。
例え、本人が望んでいなくても。
「そう、面倒なやつ。……でも、ま、それくらい、自分でどうにかできなきゃ、当主になるの資格はないけどね」
そう言える夏翠には、素質があると思う。
姫宮のトップとして、やっていく素質が。
「ごめんね、また、くるね」
若干、疲れがたまった感じの夏翠は、そう言って、帰ってく。