【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「……おい、ジジイっ!」
勢い良く、本当に勢い良く、襖が開いた。
「あ、薫だ。やほー」
帰るタイミングがどんどんわからなくなってきて、とりあえず、挨拶してみた。
「沙耶?お前、何でここに……」
勿論、彼は驚く。
「いや、退院できたから、とりあえず、あっちに帰ろうかなって思ってたら、拉致られてさ。話聞いてたの」
「……」
なにも言えないって顔をした薫は、私の前にしゃがみこむと、私の頭を撫でた。
「何で、いきなり拉致られて、平気そうな顔をしてんだよ。一応、ぶっ倒れたんだろ?」
「ん。でも、もとからある病気だし、ねぇ?」
“滅帝”と知られる、薫。
年に似合わず、めちゃくちゃ強いらしい彼は、女に冷たいということでも有名で。
なのに、最近、彼は私を気にかける。
「……具合、少しでも軽くしたいんだったら、相馬か京子に言え。どっちかっていうと、相馬の方がいいな。楽にしてくれる」
「へ?……ああ、治癒力ね。別にいいよ~死ぬときゃ、人間って死ぬもんだし」
あと、何年の命かなんて、わかる。
自分の体だから、どれだけもってくれるのかだって、わかるんだ。
恐らく、私の命はもう、長くない。
「お前、軽いなぁ……」
「軽くないよ。事実を述べているだけ。最近、よく考えているんだけどさ、私は私なりに精いっぱい生き抜こうって思っているんだよね。生きられないなら、せめて……」
「……生きられないなんて、決めつけることじゃない」
低い、声が聞こえ、横を見た。
こちらを見る、“戮帝”は、命のことには敏感だ。
大切な人を失っているから。