【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「……帰ります」
ぐったりと意識を手放した沙耶を抱き上げて、相馬はそう言った。
「また、後日に話しますから。これ以上、今、話しかけないで下さい。俺自身も、混乱しているので……」
相馬が思い出させたくないといっていたのは、知っていた。
けれど、こうしなければ、犠牲は増えるばかり。
俺は、桜や薫を失わない為に、息子同然の健斗の子供である沙耶を追い込んだ。
最低行為だと、わかってる。
冷酷非道な”戮帝“という名に、相応しく。
「……いつになったら、終わるんや……?」
薫、京子、俺。
三人だけの、この部屋にそんな、京子の声が響いた。
「俺、夏翠んとこ、行ってくるわ……」
薫が、出ていく。
全てが、動き出す。
「……薫、今はまだ、動くなよ。機会じゃない」
忠告すれば。
「…………分かってる」
――何もできない、歯痒さ。
俺達は、どうしてこうなんだろう。
桜だって、美桜だって、沙耶だって。
普通の女の子なのに。