【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
小学五年生の時、桜が行方不明となった。
学校帰りに帰ってこず、誰もが探した。
分からないことはないと言われる三家の情報力を使って、探した。
けれど、見つからなかった。
それに憤った薫が、初めて“目覚めた”ときのこと、夏翠は忘れていない。
あの日から、薫は“滅帝”と呼ばれるようになった。
焔棠の人間…雪さんもそうだが、薫には、狂気的な部分が沢山ある。
その中のひとつ…愛すがあまりに目覚めた、狂気的な愛は、女を狂わせる。
雪さんのそんな狂気的な愛を受けてなお、彼を支え続けた雪さんの唯一無二の蝶、千夏さんが亡くなったとき、それはもう、彼の報復はすごかったらしい。
塵ひとつ、煙ひとつと残らなかった。
「桜は、さみしがり屋なんだ…」
強く、常に笑顔の桜は、絶対に泣かない。
常に背筋を伸ばし、凛としている。
それは、彼女の決意だ。
そんな決意を弱らせる、薫の存在。
もしかしたら、彼がこの世界にいるから、彼女は何度死にかけても、この世界に留まっているのかもしれない。
桜が植物状態となって、二年。
この話を聞いたときは、なんで、彼らだけがこんな目に遭わなければならないのだろうと思った。
「うん…」
薫の呟きにこれくらいしか、言えない私。
だって、桜の泣き顔なんて、見たことないから。
桜が誘拐されて、約四年後。
誰もがわからなかった桜の居場所。
既に生きている望みも薄かったのに、どこからか情報を手にいれてきた薫は桜を救い、桜を守り抜くと誓った。
色々な“調教”をされた彼女はボロボロで、逃げ惑っていたら、攻撃を受け、薫も重症を負った。
心を殺していたくせに、薫の血を見て、目を醒ました桜は運ばれた病院から、勝手に抜け出して―…事故に遭い、意識不明。
何故、勝手に逃げ出したとか、そんな怒りは誰にでもあった。
けど、そんな私達ではわからない桜の気持ちもそこに存在していて。
過酷な運命にいるからこそ、彼女はその道を選んだ。
―…自分の意思で、選んだんだ。
そんな彼女の思いを踏みにじるように、否定するのは、間違いだと、私は思っている。