【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「湊も年、取ったしね」
「やめて、沙耶。若干、傷つく」
外見が相変わらず若々しい湊。
幼なじみから言えば、美貌の両親。
正直、沙耶からすれば、どうでも良い。
「春ちゃんのところに行って、学校行くから」
ご飯を作ってくれたであろうお母さんに聞こえるはずはないが、一応、お礼を言って、玄関に向かう。
天井は高く、玄関はバカ広いらしいこの家。
「待て、沙耶、弁当!」
「あ。ありがとー、大兄ちゃん」
ヨレヨレの服を着た大樹から、沙耶は弁当を受けとる。
「遅くなるのか?」
「んー、どうだろ。分かんないや。でも、遅くなるときは、連絡するから」
黒髪短髪、母親がイギリス系ハーフで父親が日本人の大兄ちゃんの瞳は、黒と青のミックスになっていて、とても魅力的。
「ちゃんとしろよ!」
大兄ちゃんの後ろからついてきた勇兄ちゃんは、そう叫ぶ。
勇兄ちゃんは純日本人なので、大兄ちゃんとは違い、漆黒の髪と漆黒の瞳を持っていたはずだが、染めたらしく茶髪になっていて、瞳は変わらず、漆黒。
既に亡い、両親から受け継いだものを一部は残していたくてと彼は、昔、語った。
そんな勇兄ちゃんのお母さんは、勇兄ちゃんを生んですぐに亡くなり、健斗の幼なじみであった勇兄ちゃんのお父さんは、事故で亡くなったそうだ。
おまけに沙耶が幼い頃、死にかけていたのを見かけたあの日から、勇兄ちゃんは超過保護になった。
「分かったってば。勇兄ちゃんったら、心配しすぎ」
シスコンな彼等。
過去のこともあると思うが、女子高生になっても、ここまで心配されるとなんだかいたたまれない。
「お前は自分のことに無頓着過ぎるから、心配なだよ…頼むから、無茶だけはするなよ」
過去のことがなければ、軽く笑い飛ばすことができたであろう。
けど、ここは“異常”な家だから。
顔面偏差値が無駄に高いらしい家族を見ながら、沙耶は呟く。
「…学校行くだけなんだけど」