【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
「ああっ!もう!」
グシャグシャと髪を掻き、トップを見据えた。
「結局!私が言いたいのは!…健全なお付き合いとか言わないから、無理矢理は禁止!分かった!?」
「はい…」
果たして、沙耶の兄貴たちの色恋沙汰で落ち込んでいるのか、それとも、沙耶の言葉で落ち込んでいるのかは定かではないが、また、悪さすれば、潰すということで。
とりあえず一件落着して、髪の毛をほどき、振り向く。
「本当、ごめんねぇ~昔から、ああなんだ。まぁ、弱いから、気にしないで」
気にしないなんて、無理かもしれない。
男に無理矢理、押さえ込まれたのだ。
恐怖もあったかもしれない…
「格好良かったね!名前は?何て言うの?私は、澪!」
―…どうやら、心配はいらないらしい。
「黒橋沙耶。沙耶でいいよ」
「本当?私も澪で良いよ!千羽澪!」
「わかった。って…“千羽”!?えっ、じゃあ、千羽千歳の姉!?」
「そうそう!千歳のこと、知ってるの?」
「いや、私が驚いているのは、千羽って男三兄弟のはずで…」
「ああ、そゆこと!」
澪は合点がいったと言うように、笑う。
「私ね、千歳の義姉なの。えっと…千歳のお兄ちゃんである、千羽相模の嫁だから」
自分を指差してそう言った澪は、確か、まだ、17歳…沙耶と同い年のはずで。
「婚約者だったの。私がもー好きで好きで」
頬を染めてそう言う彼女は、とても幸せそう。
「ん?じゃあ、さっきの状況、めっちゃダメじゃん!」
男に襲われかけていて、しかも、旦那持ち。
あんな目に遭っても、何故、平然と…
そんな沙耶の疑問に答えるように、
「私達は、幼い頃から虐めとか、誘拐とかよくあることでしたので」
冷静な声でそう言った夏翠さん?は、沙耶の手を握る。
「先程は、本当に助かりました。ありがとう」
先程とは違う雰囲気。
(ああ…)
”お嬢様“だ。
感じたことある雰囲気だと思えば。
言えば、沙耶もその面子なのだが、性格がこの通りなので、お嬢様らしさは全くない。
(ん?と、いうことは…)
沙耶は夏翠を見て、尋ねる。
「姫宮、夏翠さん?」
見た資料と顔が一致。
「ええ…」
真姫の場合、一言で言えば、かわいいだった。
でも、夏翠の場合は…美人である。
「姫宮夏翠。今日から、この学校に通うの。生徒会室に行く途中で、迷っちゃって…」
相変わらず、仮面をつけ続ける彼女。
そんな彼女に口を開こうとしたとき。
「夏翠!」
聞こえた低い、声。
聞いた覚えがあると思い、振り返れば。
「あ。新しい先生!」
そう、職員室の前でぶつかった先生だった。