【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
今頃、妻を襲っているであろう父親の健斗は、この国でそれなりに名のある権力者である。
まず、世界経済の中枢、姫宮家。
関東一極道、“帝王”悪の街支配者、焔棠家。
ホテル、商社、飲食店などその経営は多岐に渡り、各界の人脈は姫宮並み。
日舞としても名を馳せる家で、極道の仲介役も請け負っている。光と闇の世界の狭間で、警察と動き回り、闇からの光への侵入を防ぐ家、御園家。
この国で誰でも知っていると言えば、この三家か、建築専門の藤島グループだろう。
藤島は御園ほどではないが、それなりに大きなグループで。
最近も御園との共同でホテルが作られて、完成したとテレビで言っていた。
(…嫌いだけど)
沙耶が結婚しない理由、
母親の発作持ちになった理由、
それはすべて、藤島グループのせい。
父の健斗は藤島グループで過去に働いていたが、あることを境に、現在は、自身で作った会社でどんどん業績を伸ばしている。
名前を出せば、すぐに出てくるまでぐらいになった黒橋グループ。
主に御園の下につくグループであるが、父さんの手腕は恐ろしいもので。
海外を飛び回りながら、いろいろな契約を取り続け、今や、御園のトップとも顔見知り。
すごいことなんだと会社の社員たちが騒いでいたのを思い出す。
そんな、藤島グループの娘であった、お母さん。
幼い頃に捨てられたお母さんの不遇な人生。
それを救った、お母さんを捨てた藤島グループの社長に深く信頼されていたお父さん。
お母さんを愛しているからという理由だけで、会社を止め、自分の会社をつくり、それをどんどん大きくしているお父さんの人生なんて、それこそ、波瀾万丈。
本気で物語として発売しても、違和感無く、虚構と思われる話ばかり。
そんな人が自分の父親だと知ったとき、自分の身の上を一気に理解した。