【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
沙耶の家があるこの街から、車で一時間ちょっとの街。
焔棠の治める、悪の街。
そこには、焔棠、御園、姫宮の本家がある。
その街から、すべてが始まったその三家は、今や、憧れの存在。
知らないものはいないと言われ、誰もが興味と恐怖で語り合う。
そんな闇の存在である焔棠の他にも、勿論、闇に生きている者たちは沢山いる。
父さんの実家も、元は闇に生きている者たちの集まりだった。
今となっては、既に跡形もなく、お父さんが消し炭にしてしまったので存在はしていないが、間違いなく、お父さんは闇に生きるものたちの血を引いている。
極道の息子として生まれ、父親を憎み、実家を跡形もなく、父親と共に消したお父さん。
その後は、藤島グループの会社に入り、実力だけでのしあがって、社長のお気に入りに。
暫くすると、社長の娘との縁談を持ちかけられ、それに仕方なく応じるも、当の娘本人が拒否し、駆け落ちすると言い出したので、その娘を戸籍上の妻として、その恋人と共に引き取り、結ばせた男。
自身の家に二人を住まわせ、戸籍では、二人の息子として生まれた大兄ちゃんを自分の子供ということにし、時が経って、すべてが社長に露見すると、キャリアとかをすべて捨てて、会社をやめ、自分で会社を作った男。
会社をやめた後も相変わらず、二人を匿い続け、ある日、運命の出会いを果たす。
死を望むボロボロになるほどに心が砕け散った、漆黒の姫に闇の中で出逢い、それが匿っている社長の娘と双子だったことを知ったときに、狂気に顔を歪めたらしい父は、漆黒の姫ことお母さんを傷つけた奴等を塵一つ残らず、殲滅したと聞いている。
父の狂気は、計り知れない。
ただ、一般人ではない。
ハーフだったお母さんと、社長の娘。
捨てられたお母さんと大切に育てられた社長の娘。
地獄を見たお母さんと幸せだった社長の娘。
双子なのに、ここまで違った扱い。
それは、何故か。
聞かなくてもわかる。
だって、そのせいで、
沙耶が慕っていた王子さまは、
王子が愛していた社長の娘ことお姫様は、
消えてしまったのだから。