華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「まさか、かけおち、とか……?」

「想像に任せる」


適当にかわしたセイディーレは、「これだけは他の男にも言っておきたいが」と前置きして、私の腰をぐっと強く抱き寄せる。

そして、男の子に向かってさらりとこんなひとことを口にした。


「俺の女に手を出すなよ」


ドキン!と、大きく心臓が跳ね上がった。

私、いつの間にセイディーレのものになったのよ……とつっこみながらも、こんなふうに独占されたのは初めてで、胸が高鳴るのを抑えられない。

うっすら頬を染めて呆気に取られるふたりをよそに、彼は別荘のほうに向かい始めた。

橋を渡り、庭園の向こうに綺麗なレンガ造りの邸宅が見えてきたところで、まだ寄り添っている彼に小声で問いかける。


「ちょっと、どういうことですか?」


訝しげに見上げていると、彼は前を見たまましれっとこう答えた。


「恋人を装っていたほうが怪しまれないし、俺も守りやすい」

「あ……あぁ、なるほど」


なんだ、そういうことか。

それならそうと言ってくれればいいのに! 変な期待をしちゃったじゃない。

< 114 / 259 >

この作品をシェア

pagetop