華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
彼の意図がわかって納得するも、なんだか心にもやもやが残る。

……いやいや、ちょっと待って私。期待ってなに? 私、セイディーレの恋人になりたかったわけ?

綱を手放され、庭を悠々と闊歩し始めるティルクを見る彼から目を逸らし、それは断じて違う!と、頭をぷるぷると横に振った。

そのとき、邸宅の前の道を歩いてくる若い男性二人組が、こちらを見ながらなにかを話していることに気づく。

耳を澄ませてみれば、「あの小綺麗で可愛い子、見たことない顔だな」、「閣下といるってことは、どこかの令嬢か?」なんて話す声が聞こえてくる。

私のことを言ってるの? なんか嫌だな……。

無意識に彼らから顔を背けていると、セイディーレも気づいたらしく、わずかに瞳を鋭くさせる。


「お前が俺のものだと周知させておけば、むやみに近づいてくる者もいないはずだ。ああいうやつらにも見せつけておくか」

「え?」


どういう意味かを考える間もなく、背中に手を当てられ、また密着するくらいに身体を向き合わせられた。

驚いて見上げると、彼はなぜか制帽を取り、それで私の顔を隠すように横に持ってくる。

それと同時に、彼の綺麗な顔が近づいてきた。

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