華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
指揮官様の恋人として
三階建ての、外観は小さなお城のようなセイディーレの邸宅は、きらびやかさは控えめでも、中もとても綺麗だった。
入ってすぐのホールにはマントルピースの暖炉があり、座り心地の良さそうなソファが応接間のように置かれていて、落ち着いた雰囲気がシックで素敵だ。
どことなくハーメイデンの城を思い起こさせる内装を見回しながら、制帽や腰に吊るしていた剣を取り外す彼に尋ねる。
「すごく素敵な邸宅ね。これ、いつ建てたの?」
「五年くらい前だ。城よりここのほうが居心地がいい」
五年前というと二十歳くらいのはず。そんなに若いときにこの豪邸を建てたのか、と驚くと同時に、ここのほうがいいと言い切ってしまうことに笑いがこぼれた。
でも、この広さはひとりで過ごすには少し贅沢すぎる気がする。普段は家族と一緒にここで過ごしているのだろうか。
そもそも、セイディーレの家族構成はどうなっているのか、まだ聞いたことがない。
「そういえば、セイディーレのご両親はなにをしているの? 兄弟は?」
ソファのあたりにいる彼のほうを振り向いて問いかけると、彼は一瞬ぴたりと静止したものの、すぐに口を開く。