華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情

姉様と話して、翌朝出発することに決めた。

書庫で記憶を頼りに例の本を探し出したあと、すぐにベッドに入り、朝を迎えた。朝食を取ると、ソルレに頼んで用意してもらった、町娘が着るドレスに袖を通す。

余計な装飾がなく、スカートもボリュームを抑えられた、ベージュ色のドレス。これなら目立たないし、馬にも跨がれる。

一国の姫がひとりで城を、さらには国を出るなんてことが知られたら一大事だ。

けれど、皆は私の姿をほとんど見たことがないため、いなくなっても気づかれにくい。だから、こんな大胆なことができるのだ。


城にいる者にも、計画を明かしたのは義兄様、ソルレと、もうひとりだけ。

ソルレもとても心配していて、かなり引き止められたけれど、大丈夫だと押し切った。

意外にも義兄様はそこまで反対せず、『リルーナは勇敢だな。見直した』なんて言って、感心したように笑っていた。

彼は幼少期かなりやんちゃな子で、冒険心も強かったらしいから、共感してくれるのかもしれない。

そして、義兄様から事情を伝えられたもうひとりの人物は、ハーメイデン国を守る騎士団の長・セアリエだ。

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