華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
ふたりも軽く頭を下げ、ワクワクした様子でエトワルくんが話し始める。


「閣下が恋人を連れて来るなんて初めてだから、なんかドキドキしちゃいます」

「ねー! でもルリ様すごく綺麗だし、納得」


目を輝かせて頷くアンジェさんは、とっても複雑な気分になる私に向き直って、意気揚々と言う。


「どういう事情があるのかわかりませんけど、ゆっくりしていってください。とりあえず、すぐ夕飯を作りますから」

「このあと巡回に出るから、俺のことは気にしなくていいぞ」


野菜が入った籠を持ち上げて張り切る彼女に、セイディーレは淡々と告げた。

巡回って、もしかして山賊がいないかどうかを見回るつもりなのかな。身を隠していなければいけないとはいえ、私だけここでのんびりしてしまうのは、やっぱり申し訳ない。

そんな私の心情を知る由もないアンジェさんは、無邪気に笑う。


「承知しました。じゃあ、ルリ様を精一杯おもてなししますね!」

「僕も手伝うよ」


さっそくキッチンがあるらしき奥の部屋へと向かうアンジェさんに、エトワルくんもついていった。なんだか姉弟みたいで微笑ましい。

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