華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「ふたりとも気のいいやつらだ。俺がいない間になにか困ることがあったら、遠慮なくあいつらを頼ってくれ」


声をかけてくれたセイディーレに、私はほっこりした気分で「わかりました」と答えた。

でも、セイディーレはしばらく外へ出てしまうのかと思うと、すごく心許ない。私はだいぶ彼のことを頼りにしているみたいだ。


向き合って十人ほどが座れそうな長いテーブルがいくつか置かれたダイニングルームに移動し、私とセイディーレはアンジェさんが用意してくれた紅茶をいただくことにした。

そうしてひと息ついたのもつかの間、向き合って座っていた彼は立ち上がり、すぐにまた剣を身につけ始める。

窓の外はすでに夕闇が迫っている。これから、見知らぬ土地で過ごす夜が始まるんだ。

なんだか無性に寂しくて、不安で。あの軍服の裾を摘んで、引き止めたい気持ちになる。


「セイディーレ……!」


私は無意識に腰を上げ、名前を呼んでいた。制帽を被ろうとしていた彼が、こちらを振り向く。

不安が顔に出ていることはわかっているけれど、なんとか笑みを浮かべる。


「……早く、帰ってきてね。気をつけて」

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