華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「あーうん、まぁ……。でも、そんなこと全然気にしないで! 名前もルリって呼んでくれていいし」


私もアンジェって呼んじゃおう、と思いながらにっこり笑って言った。

身分を気にしてほしくないのは本心だ。そういうのは抜きにして、ただ普通に友達になりたい。

その思いは彼女も同じようで。


「ほんと? じゃあルリ、よろしくね!」


アンジェもくりくりとした目を三日月みたいに細め、改めて挨拶をしてくれた。

思えば、私には“友達”と呼べる人はいない。

城の中に同年代の子がいても、使用人だからと、どうしても私と対等に接することはためらってしまうらしい。私はまったく気にしないのだけど。

アンジェとは、たわいないことも、大事なことも、なんでも話せるような友達になれたらいいな。

……と、私がここにいられるのはきっと数日しかないとわかっていながらも、願わずにはいられなかった。


サクサクのパイに包まれたサーモンに舌鼓を打ちながら、他にも気になることを聞いてみる。


「ここはふたりで管理してるの?」

「元々はあたしと母さんとでやってたの。でも母さんが具合を悪くしちゃって、施療院に入ってからはあたしが」

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