華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
なんてことないというように話すアンジェだけれど、家族が入院しているだなんて、精神的にも体力的にも辛くないはずがない。
彼女を労いたいのに、気の利いた言葉が思い浮かばない。
「そう、なんだ……。大変ね」
私は眉を下げ、ぽつりとこぼす。陳腐なセリフしか出てこない自分に嫌気がさして、目を伏せた。
しかし、アンジェは明るく笑い、「でも、エトワルが手伝ってくれるから」と言う。エトワルくんに目を向けると、彼もにこやかに頷いた。
「僕もここの掃除をしたり、裏の畑で農業を手伝ったりしてます。居候もさせてもらってるし」
「そうなのね。さすがセイディーレの従騎士」
ふたりで助け合って生活しているんだな、と感心していると、エトワルくんはフォークを置き、落ち着いた口調で話し出す。
「僕は農民の出身で、本当は騎士になれるくらいの金銭的余裕なんてありませんでした。でもどうしても騎士になりたくて、ずっと剣の練習をしていたら、それを見た閣下が特別に見習いとしてつかせてくれたんです」
「セイディーレのほうから、自分の下につけって言ったの?」
「はい。閣下はずっと城のほうで忙しくしてるけど、時間があるときはこっちまで来て、僕に剣術や礼儀作法を教えてくれるんですよ」
彼女を労いたいのに、気の利いた言葉が思い浮かばない。
「そう、なんだ……。大変ね」
私は眉を下げ、ぽつりとこぼす。陳腐なセリフしか出てこない自分に嫌気がさして、目を伏せた。
しかし、アンジェは明るく笑い、「でも、エトワルが手伝ってくれるから」と言う。エトワルくんに目を向けると、彼もにこやかに頷いた。
「僕もここの掃除をしたり、裏の畑で農業を手伝ったりしてます。居候もさせてもらってるし」
「そうなのね。さすがセイディーレの従騎士」
ふたりで助け合って生活しているんだな、と感心していると、エトワルくんはフォークを置き、落ち着いた口調で話し出す。
「僕は農民の出身で、本当は騎士になれるくらいの金銭的余裕なんてありませんでした。でもどうしても騎士になりたくて、ずっと剣の練習をしていたら、それを見た閣下が特別に見習いとしてつかせてくれたんです」
「セイディーレのほうから、自分の下につけって言ったの?」
「はい。閣下はずっと城のほうで忙しくしてるけど、時間があるときはこっちまで来て、僕に剣術や礼儀作法を教えてくれるんですよ」