華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「おかえりなさい!」


私がいるとは思わなかっただろうセイディーレは、一瞬驚いたように目を丸くした。しかし、すぐに無表情に戻って、ゆっくりこちらに近づいてくる。


「まだ起きてたのか」

「あ、うん、眠れなくて……」


なんだかそわそわしながら、頭の中であとに続ける言葉を探していて、ふと気づいた。

あれ、顔を見るだけでよかったはずなのに。顔を見たら、もっと話したくなってる。

やっぱり私、心細かったんだ。……もう少し、一緒にいたい。

その気持ちに素直に従うことにした私は、どう伝えようかと考えながら、自分の部屋のドアの前に立つ彼を上目遣いで見上げる。


「こういうとき……恋人って、どうするの、かな」


そんなひとことをたどたどしく口にしたそばから、こちらを凝視するセイディーレからふいっと顔を背けた。

なに回りくどいこと言ってるんだろう私!

昼間みたいに、普通に“一緒にいたい”って言えばいいのに。ふたりきりの今、恋人なんて設定は関係ないし!

自分の発言がおかしすぎて頭を抱えていると、数秒後にガチャリと音がした。目をやれば、セイディーレが自分の部屋のドアを開けて中へ入っていく。

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