華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
お父様たちが、皆無事に国へ帰れたの?


「本当に!?」

「さっき確認してきたから間違いない。山賊は城にもお前がいないことを知って、一旦自分たちの本拠地に引き返したらしい。お前は狙われていることに変わりないがな」


それを聞いて、一気に身体から力が抜けていく。彼の前に立ったまま、震える両手を無意識に口元にあてる。


「あぁ、よかった……ほんと、よかった……」


皆の無事がわかって、安堵の声を漏らした。それと同時に、張り詰めていた糸が切れたみたいに涙が溢れてくる。

私を見上げるセイディーレに、「リルーナ」と穏やかな声で呼ばれ、少しドキリとしつつ濡れた頬を拭う。


「なんか、安心したら泣けてきた」


あは、と渇いた笑いをこぼして、くるりと彼に背を向けた。

早く泣き止まないとまた変なやつだって思われそうだけど、緩んだ涙腺はなかなか元に戻らない。

鼻をすすったり、上を向いてパチパチと瞬きしてみたり。なんとか涙を散らしていた、そのとき──背中からふわりとぬくもりに包まれた。

身体に回された腕の力と、頬に自分のものではない柔らかな髪が触れるのを感じて、息が止まる。

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