華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
5─激情─
禁断の恋に落ちた姫君
翌朝、自然と瞼が開いたのは午前七時半だった。窓から柔らかな光が差し込んでいて、今日も天気が良いことがわかる。
……あんまり寝れた感じがしないな。皆の無事がわかって、心配事はひとつなくなったというのに。
ネグリジェのまま部屋を出て、大きなあくびとともに挨拶をしながら居間に入った。ダイニングよりもこじんまりとした部屋で、四人がけのテーブルやソファが置かれている。
そこで朝食を準備しているエトワルくんとアンジェが、朝日みたいに明るい笑顔を向けてくれる。
「ルリさん、おはようございます」
「おはよう。朝食できてるよー」
「わぁ、ありがとう!」
スクランブルエッグやサラダが並べられたテーブルに目を輝かせるも、すでに軍服に着替えて席についている彼を認識しただけで、心臓が騒ぎ出す。
セイディーレは涼しげな表情で、私と目も合わさずに新聞を読んでいた。
昨夜の一連の出来事を、嫌でも思い返してしまう。優しく抱きしめられた感覚と、降って湧いた自分の感情が、胸を落ち着かなくさせる。
寝る前にいろいろと考えたものの、結局あの感情の正体をまだ確信してはいない。……というか、“確信したくない”と言ったほうが正しいかもしれないけれど。