華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
そして真剣な表情になり、重い声色で独り言のようにこぼす。


「ひとりでクラマインへ行って薬草を見つけてくるなんて、無謀にもほどがある……」

「馬の乗り方を教えてくれたのはあなたでしょう。今その経験を生かさないでどうするの?」


私は小屋の奥へ進み、愛嬌のある茶色い雄馬の顔を撫でながら言った。

城の中で様々な教育を受けてきた私は、馬術もセアリエから教わっていた。

そこで相棒になったのが、気性が穏やかなこのメーラ。雄ではあっても結構ナイーブな性格で、誰でも乗せるわけではないけれど、私のことは絶対に振り落としたりしない。

そんな彼を繋いでいる鎖を外そうとしていると、セアリエが厳しい顔をして言う。


「城の中で訓練するのとはワケが違うのですよ。姫様は外の危険をわかっていない」

「危険も、外の世界の美しさもわからずに年老いていくのは御免だわ」


彼の言葉に対して、少し強めの口調で言い返した。

この世には危険もあれば、素敵なことだってたくさんある。そのすべてを知りたいのよ。

押し黙るセアリエに、私は少し苦笑を漏らして付け加える。

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