華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
エトワルくんはまだ試合に出ることはなくても、今後のために見ておくのだろう。
セイディーレはまた山賊の首領捜しに出るのだろうし、今日はアンジェとふたりで過ごすことになるのか。女子ふたりだけなら、いろんな話ができるかも。
なんて思いながらスープをすくっていると、セイディーレが私たちに念を押す。
「なるべく早めに戻るつもりだが、俺がいない間は用心してろよ」
「大丈夫ですよ、セイディーレ様」
そう答えるアンジェは、ニヤニヤした締まりのない顔を隠し切れていない。
きっとまた、“愛故の過保護”だと思ってるんだろうな……。あぁ、本当のことを打ち明けちゃいたいよ。
早々と朝食を終えたセイディーレは、ひとり席を立って身支度を始める。
私の後ろにある皮張りのソファに置いていた制帽や手袋を身につけた彼が、さっさとドアのほうへ向かおうとすると。
「あれっ、しないんですか?」
アンジェが意外だと言いたげな声を出し、足を止めたセイディーレは不思議そうに振り返る。
「しない? なにをだ」
「それはもちろん、“行ってきますのチュー”ですよ!」
とってもワクワクしながら人差し指を立てる彼女に、セイディーレは石のように固まった。
セイディーレはまた山賊の首領捜しに出るのだろうし、今日はアンジェとふたりで過ごすことになるのか。女子ふたりだけなら、いろんな話ができるかも。
なんて思いながらスープをすくっていると、セイディーレが私たちに念を押す。
「なるべく早めに戻るつもりだが、俺がいない間は用心してろよ」
「大丈夫ですよ、セイディーレ様」
そう答えるアンジェは、ニヤニヤした締まりのない顔を隠し切れていない。
きっとまた、“愛故の過保護”だと思ってるんだろうな……。あぁ、本当のことを打ち明けちゃいたいよ。
早々と朝食を終えたセイディーレは、ひとり席を立って身支度を始める。
私の後ろにある皮張りのソファに置いていた制帽や手袋を身につけた彼が、さっさとドアのほうへ向かおうとすると。
「あれっ、しないんですか?」
アンジェが意外だと言いたげな声を出し、足を止めたセイディーレは不思議そうに振り返る。
「しない? なにをだ」
「それはもちろん、“行ってきますのチュー”ですよ!」
とってもワクワクしながら人差し指を立てる彼女に、セイディーレは石のように固まった。