華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
び、びっくりした……。まさか本当に“行ってきますのチュー”をするとは!

まぁ、おでこだけど。あんまり拒否すると不自然だからしておいたのかな。

それにしても、まったく動揺せずに恋人の演技を続けられる彼を尊敬する。こちらはドキドキしまくっているというのに。

こんなに心を揺さぶられているのは自分だけなのかと思うと、悔しいような悲しいような、なんとも言えない気持ちになった。


私たちも朝食を終え、エトワルくんは出かける準備をする。

腰に剣を吊るすと勇ましさが増して、彼もこれから立派な騎士になるんだろうなと思いながら、アンジェと一緒にホールで見送る。


「じゃあ、行ってくるね」

「うん。気をつけて」


ドアの取っ手に手をかけようとしたエトワルくんは、ふいにこちらを振り向いた。そして私の隣に立つアンジェを見つめ、口を開く。


「……僕たちもしておく? いってきますのチュー」


あっけらかんと放たれたひとことに、私もアンジェも目を見開いた。

エ、エトワルくん、それはボケているの? それとも結構本気!?

ケロッとしている彼の真意を探ろうとする私の隣で、顔を火照らせたアンジェが口をパクパクさせている。

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