華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「あたし年上だし、冴えない使用人だし、エトワルの周りには可愛い女の子もいっぱいいるし。恋愛対象にはなってないってわかってるけどね」


覇気のない笑い声が、とても切なく感じた。

ネガティブに考えてしまうのは、きっと普通のことだろう。自信満々で恋する女の子は、なかなかいないだろうから。

静かに思いを巡らせていると、アンジェはすぐにいつもの口調に戻ってさっぱりと言う。


「あの子のダメなところはひとつだけよ」

「ひとつ?」

「あたしの良さに気づいてないところ」


きゅっと紐を縛りながら口にされたひとことに、私はちょっぴり吹き出してしまった。

卑下したかと思ったら自信家みたいなことを言うんだもの。それがアンジェらしいけど。

でも、私はお世辞でも慰めでもなく、そんなことないと思う。


「エトワルくんはちゃんと気づいてると思うけどな」

「どうだかー」


軽く受け流す彼女にくるりと向き直り、まっすぐ見つめて力強く伝える。


「だって、昨日会ったばっかりの私でも、アンジェはすごく素敵な子だってはっきり言い切れるもん。ずっと一緒にいるエトワルくんがわかってないはずないでしょ」

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