華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「『そんな貧相な身体を売り物にしても、たいした稼ぎにならない。俺の家で働いたほうがマシだぞ』って」


セイディーレの口調を真似たセリフを聞いて、私は微妙な笑みを浮かべた。

確かに彼が言いそうなことだけど……。


「ひどすぎる」

「でしょ? 確かに胸もくびれもそんなにないけどさー」


アンジェは不満げに口を尖らせたものの、すぐに表情を柔らかくする。


「でも、彼なりにあたしたちを助けようとしてくれたんだって、あとでわかった。こんな豪邸に住まわせてくれて、食べ物にも困らなくて、あたしたちの生活は格段に良くなったから。
母さんをいち早く施療院に入れてくれたのもセイディーレ様だしね」


その話を、私も彼女と同じように微笑みながら聞いて、頷いていた。

知れば知るほど、彼の温かさに触れられる。そのたびに、彼のことを好きになる。


「あたしもエトワルも、セイディーレ様が恩人なのよ。だから、ここで精一杯働くの」


大変だとかきついとか、泣き言ひとつ言わずはつらつとしているアンジェが、なによりも美しく見えた。

セイディーレに助けられた人は、きっと私たち以外にもたくさんいるのだろう。そのことを、とても嬉しく思った。


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