華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
黒の騎士は、敵か味方か
一年中過ごしやすい気温のハーメイデンは、朝晩は少し冷える。けれど、すっきり晴れ渡る空の下、颯爽と町中を駆け抜けていくのはとても爽快だ。
城を出てしばらくは、人々が集まり賑やかな商店が軒を連ね、次第に緑が多いのどかな景色が広がっていく。
眩しくも優しい日差し、店で働く人の活気に満ちた声、畑の土の香り、風にそよぐ木々の葉ずれの音……。
私にとってはどれもが新鮮で、まるで別世界にトリップしたかのようだった。
途中で休憩をしながら、大きな問題もなくハーメイデンとクラマインの国境付近までやってきた。
国境は、林の中を流れる小さな川を境としている。水は浅く、流れも穏やかなそこに差しかかったあたりで、何度目かの休憩をすることにした。
メーラの背から降りると木陰に座り、腰につけたポーチから地図を取り出す。
昨日、本で確かめて、アルツ草があるらしい森に印をつけておいた。その場所を確認すると、あと三十分ほど走れば着きそうだ。