華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
溢れる想いはキスで塞いで
庭園をゆっくり歩いている間、セイディーレの手が触れている部分が特に熱く、なんだかとても敏感になっているような気がしていた。
私の身体はどうしたんだろう、と不安になっていると、心配した様子に戻ったセイディーレが問いかける。
「一体なにがあったんだ、あいつを入れたのか?」
「ううん、玄関先で少し話を……。昼間あの人を見かけて、アンジェが顔見知りだって言ってたから油断して……ごめんなさい」
私は次第に声を弱くして俯いた。
おそらくラシュテさんは、昼間に私を見てセイディーレの恋人だと悟ったのだろう。それでこんな復讐を企てたに違いない。
もっと用心するべきだった……と後悔しても遅いよね。
「アンジェはどうした?」
目線を落としていた私は、アンジェのことを聞かれてはっとし、ぱっと顔を上げた。
事情を説明しておかなければ、彼女の責任だと思われてしまうかもしれない。
「お母さんの具合が悪くなったって電話が来て、私が『行って』って言ったの。だから、アンジェを責めたりしないで」
真摯に頼むと、セイディーレは難しい顔をしているものの軽く頷き、「そうか……わかったよ」と答えてくれた。