華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「そんな、セイディーレのせいなんかじゃないわ。アンジェがいなかったのもたまたまだし、こうなったのは自業自得なんだから」


私は小さく首を横に振り、自分が悪いのだと訴えた。それでも彼は自分を責めることをやめられないようで、こちらの胸が苦しくなる。

セイディーレはなにも悪くない。むしろ助けてくれたのに。

肩を落としている彼の姿を見るのは初めてだ。普段からは想像がつかないくらい弱々しく感じる。

私のことでそんな顔をしてほしくない。今すぐ抱きしめてあげたいし……抱きしめてほしい。

そうすれば、お互いのやるせなさが少しでも和らぐだろうか。

そう思った瞬間、勝手に身体が動き、上体を起こした私はセイディーレの首に両腕を回していた。


「っ……リルーナ?」


驚きと戸惑いが混ざったような声を出す彼を、黙ったままただ抱きしめる。

やめろと言われるかと思ったものの、意外にも彼はじっとしていて、しばらくするとそっと背中に手が回された。

そうして、言葉がなくても気持ちが伝わっているかのように、お互いにしっかりと抱きしめ合った。

< 167 / 259 >

この作品をシェア

pagetop