華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「そんな……それはセアリエの憶測でしょう!? 城で見たというのもきっと見間違いよ。だって、もし彼が悪魔だとしたら、私はとっくに危害を加えられているはずじゃない!」

「そうできなくなってしまった理由があるのかもしれません。例えば……」


落ち着いているセアリエは、私から再びセイディーレに目線を向け、あろうことかこんなひとことを放つ。


「姫様に恋をしてしまった、とか」


ドクン、と胸の奥で重い鐘のような音が響いた。

ふいを突かれたように押し黙る私も、セイディーレに目をやる。伏し目がちな彼が、なにを考えているのかはまったくわからない。

張り詰めた空気の中、しばし沈黙が流れる。


「……諸々を否定しないということは、私が言ったことをすべてお認めになるのですか?」


なにも言葉を発さないセイディーレに痺れを切らしたのか、少し苛立ったような口調でセアリエが言った。

私もセイディーレの言い分がとても気になっていると、彼はようやく口を開く。


「私が否定したところで、あなたが信じるとは思えませんから、お見苦しいだけかと思いましてね」


わずかな微笑と嫌味を交えてかわした彼に、セアリエはあからさまにムッとしている。

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